変人でありたい
壊れかけの靴があった。
紺色の布製。カジュアルだが安っぽい。
ほつれて白い靴下が露わになる。
最初は少しくらいいいやと気にしない。
でも日増しに破れていくそれを見て誰かは笑った。
見ればその亀裂は2週間前より遥かに靴の側面をえぐって裏まで到達している。
皆は嘲笑し忠告する。
よくそんなもの履けるよな
早く新しいの買えよ
それもそうだろう。
誰もが思う。みっともない、だらしない。恥ずかしい。
忠告を受けた少年は次の日、たまらず靴屋に赴く。
安い時給。迫られる決断。2000円ならいいだろうと腹を切る。
この少年も変人でありたかった。
でも結局普通。ごく一般。普遍的な大学生。
9割じゃなくて1割になりたい。
そう願っても、結局変人にはなれないし、勝てない。
だって元々凡人だから。
今日も変人はどこかで輝く。